外部記憶の発展した世界の考察【思考実験】

どうしてもSFが書きたくなって「人間の記憶がすべて外部装置に保存され管理される社会になったら」というものを考えたけど世界考証で挫折した。その時考えたことを綴る。

 

起きている間は何らかの端末を装着し、1日の終わりにそれを取り外して本体にアップロードする。端末を取り外すと眠くなるようになっているので、非装着時の記憶は確度が低いことが知られている。この場合の記憶とは、装着者が実際に見聞きしたこと、体験したこと、その時の感情などが含まれる。

 

そもそも人の記憶には主観が含まれる上、思い出すたびに補正されていくので確かとは言えない。この外部記憶の確立された世界では、人々の記憶を「正しく」「確実に」「いつまでも」保存することが目的だ。

 

さて、主観や思い込みや勘違いを排除するにはどうすれば良いか。ここではビットコインなどでよく知られるブロックチェーンの仕組みを採用する。

 

ビットコインは使用者が管理者も兼ねる。コインの使用履歴を各々が記録し、一番記録が長いもの(もしくは一番多くの人に記録されている内容?)が正しいものと採用される。コインは常に動いているので誰か1人が改竄して不正を働いても、その他の記録が正しさを保証しているので見破れる、という仕組み。

 

これを記憶の保存・証明に採用する。

 

感情は個人のものだが事象は共通のものである。この世に起きたことは多数から認識されているはずなので、物事の起承転結は保証される。そのため、記憶を個人の都合のいいように改変することは不可能。

 

歴史を証明する上でこのシステムは有能。1人にしか観測されていない事象も、その1人が最大多数であると認識して採用する。

 

また、事象の確実性はブロックチェーンによって保証されているが、いらぬバグを防ぐために思い出の振り返りは禁止、これを破る場合いわゆる「感傷罪」にあたる。まあ発端は緩衝材とかけてこれをやりたかっただけなんだけど。

 

そうなった世界でプライバシーや秘匿すべき記憶はどうするのか、発明や特許は人類の財産として共有されるのか、そもそも誰が管理するのか、副次的に発展する技術はあるか、そして「本当に機械は信頼できるのか?」という問題をやりたかったけど考えることが多くて挫折。というわけで放棄。オリジナルというか、発想のきっかけは『失われた過去と未来の犯罪(小林泰三)』な気がする。あれは記憶が数分しか保てなくなった人類の初動と、対策が打たれた後のお話。メメントみたく少しずつ行動を進める人類の様子は結構感動。

 

ちなみに「たくさんの人で同じ偽の記憶を回想することで機械を誤認識させ爆発させる」というオチまで考えた。なんだそれは。

 

やっぱSFは生半可じゃかけない

 

文責:日笠(でもいつかはやりたい)