キャスト・アウェイを(1.3倍速で)見た話

視聴2分目私「なんだこの映画早送りして見たろ」

 

中盤私「テンポいいな」

 

な映画キャスト・アウェイを見ました。いまだにトムハンクスがイケメンって言われる理由は分からないですがふとした瞬間は「あぁ……2枚目……」ってなる。

 

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ロシアだろうがアメリカだろうが関係ねぇ、効率を良くし稼いだもの勝ちだぜ、という00年代時代背景なのかあからさまなビジネスマンが無人島に遭難してちょっと価値観が変わるよっていう、多分ありがちな話。マクガフィン変えただけでこの手の話は売るほどある。

 

無人島あるあるなので一緒に漂着した物をうまい具合に活用して難を超えていきます。じゃあ俺は何を語りたいか。

 

なんだろなぁ

 

●イマジナリーフレンドと極限状態

今度からバレーボールを見たらウィルソンと呼ぶとます。主人公が遭難中心の拠り所にしていた漂流物のバレーボール「ウィルソン」君。答えもしないのに語りかけては分水嶺の相談役とし、たぶんこの人の人生で一番心通わせたんじゃないかなってくらい(なお一方通行)頼りにしている。そんなウィルソン君との涙なしでは語れぬお別れのシーンが映画中盤のピーク。イカダで無人島から脱出している最中、不運にもウィルソンが海へ流れ出てしまう。トムハンクスはそれを助けに行こうとするも、時すでに遅し、ウィルソンは遥か水平線の彼方、トムハンクスは虚空を見つめながら見捨てたことを謝り続ける……

 

人の心の支えが何になるかは分からない。それはただの写真かもしれない。動かなくなった時計かもしれない。他人から見て可笑しなものさえ、当人にとってはかけがえのないものかもしれない。因みに身もふたもない話すると、前回の記事で書いた「観客からしたら愚かなことに一生懸命な姿に、観客は心を揺さぶられる」の理論でいくと、私達が「え、それに執着する??」って言うものに主人公が本気だと観客はなんだか深いお話だなぁって勘違いするよ。これ小手先な。

 

でも小手先だろうがなんだろうが、それってありかもなと人生の別側面を見つけられるのが映画なり読書なり創作物のいい面な訳です。自分以外の人生をトレースできるのが創作の強み。いわば私達は「何回も生きてる」それも倍速で、いいとこどりで。

 

●嫁が寝取られたからって責めちゃいけないよ

無人島から帰ってきた主人公。孤独な生活を支えてくれたのは、遭難前にプロポーズをした彼女の写真。さあ、君のために僕は生き延びたんだよ、あの時の答えを聞かせておくれと言わんばかりですが、悲しいことに彼女は別の家庭を築いていました。

 

これ、嫁(未遂)と再開するシーンがあるんだけどこの映画の中で一番トムハンクスの好感度が高いシーンだった。

 

そも、人との繋がりのなかでその人とそれ以上会わないのならば、思いや記憶は焼き増しされて脚色されるだろうけれど、本当の気持ちってのは最後にあったときのまま、更新されずに残ってるんだろうなって。

 

人づてに悪い噂を聞いて好感度が下がったり、焦れる思いが恋心を燃え上がらせたりとか色々あるだろうけど、それってスパイスでしかなくて、光と陰のように「会わなかった期間が再開した時の感情を加速させる」だけなんだなって。世の中カクテルパーティー効果で溢れてるんだって。人間都合のいいようにしかできてない。元から気にくわない人は陰口が耳によく届くし、なんとなく好きだった人への想いは会えない時間が愛へと変える。そういうもの。だから対面していない時間は想いのベクトルを変えることはできず、その勢いを強めるだけ。だから会えない間に別の男作って夜な夜な大運動会して子供こさえた女が四年ぶりに昔愛した男と再会して「ohダーリン」となるのもなんか憎めない。だってたぶんそれが人だから。会えない時間は想いを更新することはできないから。

でもそこを理性で帰らせるトムハンクスが偉いんだけどね

 

●最後にテクニック的な話を

トムハンクスの無人島生活を支えた漂流物たち。その中には羽の絵が描かれているものがありました。孤独な生活にくじけそうな時、希望を見失いそうな時、それらの漂流物が助けてくれた。

 

文明社会に戻ったトムハンクスは、羽が描かれた荷物を届け直しに行く。アメリカのど田舎、周りには何にもない農地の一軒家は留守で、荷物だけ置いて帰るトムハンクス。

 

その家からの帰り道、だだっ広い交差点で「次はどこに行こうか」と地図を広げながら悩んでいたトムハンクスのところに車が通りかかる。車の運転手の女性は「迷ってるの?」と道をいろいろ教えてくれる。会話が終わり、去っていく女性の車には、無人島生活を支えてくれた荷物に書いてあった羽の絵が描かれていて……

 

というふうに似たような形で物語に多重性を持たせると綺麗になるなって話でした。何が綺麗かって?

・孤独を支えてくれた荷物と女性の車に描かれていた羽の絵

・遭難という人生の分岐点と四方に伸びる交差点

・というかどこにでもいける交差点ってのが大海原にポツンと浮かぶ無人島とリンクしてるし、かたや無人島という絶望、かたやなんとなく明るい未来という希望ともとれるしどちらも希望の象徴とも言えるよね

 

そして、また助けられたのかなっていう苦笑で物語は終わるんだってさ

 

文責:日笠(羽ってフォレスト・ガンプじゃないよな)